労災保険に未加入中の労災事故。
労災保険は、原則として労働者を一人でも使用していれば、労災保険に加入している加入していないにかかわらず、法律上当然に適用するとされます。したがって、労災保険に未加入であっても、労働者は労災保険の給付を受けることができます。
被災労働者が労基署に労災給付の申請を行い、労基署が給付を行った場合:
@未手続期間の保険料を2年間に遡って徴収。
A給付に関してのペナルティー:
1.行政から労災保険加入の指導を受けていたにも拘らず、加入しなかった場合の労働災害および通勤災害:
労働者に支払われた保険給付の全額(注)を事業主から徴収(例えば賃金日額1万円の従業員が、労災事故で死亡した場合は1,000万円の遺族補償一時金が支払われ、この全額が事業主から徴収されます。役所では、この指導状況についてキチンと記録してありますので、言い逃れはできません。)
2.行政から指導を受ける前の、未加入中の労働災害および通勤災害:
労働者に支払われた保険給付の4割(注)を事業主から徴収、
(注)療養開始後、3年間に支給されてものに限る。また、療養(補償)給付及び介護(補償)給付は除く。
以上より、労働保険料(労災保険・雇用保険)は、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)と違って、そんなに大きな金額ではありません。もし、労災保険に未加入のまま労災事故が起こったら、数百万、場合によっては1千万を超える金額を徴収されることもあります。そうなると小企業では、事業の継続が困難になることも十分考えられます。したがって、小さな節約をしたつもりでも、結果として大きなリスクを背負うことになりますので、労災保険に未加入のままでいることは、甚だ無謀と思います。言うなれば、自賠責保険に未加入のまま車を運転するようなものです。
使用者が労災手続きを拒否。
労災保険法施行規則では、「事業主は労災保険給付等の請求において、負傷又は発生の年月日及び時刻、災害の原因及び発生状況等の証明を行わなければならない」としています。ところが、事業主の中には労災事故になるのを嫌がって、この証明を拒む場合があります。労災保険の各請求用紙には事業主の証明欄がありますので、事業主が協力しないとなるとこの欄が空白になってしまいます。
会社に証明をして貰えなかった事情を記載した書面を添えて請求することになります。このような場合は、労働基準監督署に相談した方がよいでしょう。事業主の気持ちも分らないでもないですが、明らかに労災事故であるのもかかわらず、報告を怠っていたと認定されると労災隠しとして厳正な処分がなされます。
佐藤正、http://www12.plala.or.jp/ts-office/q&amap.htm
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